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イバラッキーのK市に在住する「オカリナと山とカメラ」が好きな異邦人の他愛ない日々のあれこれを綴ります♪


by ocarina-t
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伝説の里《その2》・・・(1104)

  ~ グリムスキーワード『雨水利用』 ~

  = 青 鬼 (あおに) =


  鬼無里村から白馬村へ抜けて塩の道を北上し、姫川第二ダムを越え北アルプスを望む山間部の大地に、ひっそりと佇む集落が青鬼地区です。


この青鬼地区は、白馬村の北東端の岩戸山山腹に位置していて、農村集落で伝統的建造物が多いことから、文化庁より重要伝統建造物群保存地区に選ばれているそうです。
伝説の里《その2》・・・(1104)_c0122445_9574774.jpg


この日(4月30日)は、小雨日和で集落の屋根越しに北アルプスの雄大な景色がハッキリ望めず残念です。また、棚田に水が入り北アルプスが映る水田の写真を撮りたかったのですが、まだ水が引き込まれていませんでした。
伝説の里《その2》・・・(1104)_c0122445_959947.jpg


青鬼伝説(岩戸どうくつと青鬼)

むかし、白馬の東の村から、身の丈が七尺、全身毛むくじゃらの鬼のような大男がやって来ました。この大男はばかでかいガラガラ声を出しながら、野山をかけ回り、村の中をその大足で歩き回りました。村人は恐れおののき、男が近づくと畑仕事をやめて草やぶに隠れ、家の中にいても入り口の戸をかたくしめて声を殺していました。

大男は春から秋にかけては、ウサギ、山鳥から、姫川や谷沢の鮭、マス、イワナ、ヤマメ、沢蟹などを、体に似合わない器用な手先で捕らえて食べていました。冬になると、かってに村の家々に入りこんで、家にたくわえてある食物をたいらげ、隠しておいた酒も呑んでしまうのでした。酔うと女、子供をからかい、男にも乱暴を働き、村人はほとほと困ってしまいました。

村人はこの大男を東の村にならって、どこかへ追い出そうと、はかりごとをめぐらしました。庚申さまの夜、地酒を持ち寄り、村中の娘にありったけの晴れ着を着せ大男にしゃくをさせました。はじめは警戒していた大男も、まわりが娘と老人だけなので、だんだん気をゆるめ、とうとう酔いつぶれてしまいました。

娘たちの合図で、外に待機していた若者たちは、麻かっつおで作った太縄で大男をがんじがらめにしばりあげました。そして、大昔から不気味な口をあけている、村の北にある岩戸山の底なしのどうくつの中へ、かつぎこみ、大急ぎで風ぬけ穴を残して入り口に岩を積み上げ、押し固めてしまいました。

大男はその剛力で縄を切ってどうくつの中では自由になりましたが、入り口の岩を動かすことはできず、風ぬけ穴から大きな目をぎょろつかせ、歯をむいてわめきちらしていました。後のたたりを怖れた村人は三度の飯は運んでいましたが、七日めの朝から大男のわめき声も、ぎょろつく目も見えなくなりました。三度の飯もそのまま残るようになりました。

何ヶ月か後、東の村からやって来た旅人が、「北の戸隠の村に、鬼のような大男がやってきて、野や山を歩きまわっているが、怖ろしい顔や体つきに似ず、やさしい男で人助けの力仕事をすすんでやり、村人は大いに助かっている」と言いました。村の古老たちは、大男は岩戸山の大穴を戸隠様へ抜けたにちがいない、そして戸隠様を通るとき、魂が入れかわって善鬼様になったのだ、と言い合いました。そして三度の飯はやってあったのでたたりも少ないだろうがそれでもと、大急ぎで生まれ変わった大男を善鬼権現様として、村の氏神様に祀ることにしました。

以降、白馬の東の村では村の名を鬼無里村といい、こちらの村を青鬼村というようになりました。

(「北アルプス 白馬ものがたり」 石沢清 著(信濃路出版)より要約)



写真は、青鬼集落の棚田から望める北アルプス五竜岳。右下の青い二本の線が、長野冬季オリンピックのジャンプ台です。
伝説の里《その2》・・・(1104)_c0122445_9595979.jpg

by ocarina-t | 2011-05-03 10:45 |